Pages

11/01/2010

A Man's Heart

 ぼくは時々いちかばちか要求吠えをしてみるDenny。相手の人間がどんな反応をするか確かめてみるんだ。

 ママは歯をむき出してうなり返す時がある。凶悪な顔だよ、ママ。いいお年の奥様がそんなことするかな。
 パパは「おい、こいつ俺に吠えるぞ!」ってママに言いつける。パパ、ぼくの勝ちって考えていいの?
 Aoaoには絶対試さない。すごく怖いんだもん。女子校で鍛えられているから上下関係に厳しいんだ。ぼくは最下位の男子です。


 お天気のぐずついた週末の朝、ぼくたちは小雨交じりの三郷公園に行ってみた。ほとんど人も犬もいなくて、しーんとしている。どうせシャンプーするから少し足を伸ばしたんだ。

この向こう岸は先日行った水元公園
比較的コンパクトな三郷公園

 もうぼくは怖がらない。パパとだって平気だ。どんどん進んで匂いをチェックしていく。ここは強烈。知らない匂いが充満している。だた急にBettyと離れるのは不安だ。知らない場所ならなおのこと、一緒にいないと落ち着かない。


 Betty、絶対に飛び込まないでね。
今日は寒いよ。

 一方パパは来月のぼくの手術が怖くて仕方がない。かわいそうで、かわいそうでしかたがないんだって。
 もちろん彼は去勢手術の必要性は理解している。将来の病気のリスクや、男性ホルモンによる社会的なトラブルを回避しやすくなることもわかっている。

 そもそもCookieは避妊したのに、なぜかもてすぎだった。ばりばりの男盛りの犬はもちろん、去勢済みの犬たちまでが反応してしまったらしい。
 おかげで娘を守るお父さんはけっこう苦労したんだ。よそのドッグランでは大きな犬には本気でマウントされるし、小さな犬は後ろ足に何匹もしがみついてきた。Cookieをはさんで喧嘩が始まりそうになったことも多い。散歩で知らないおじさんが、興奮する小型犬と一緒に後をずっと追ってきたりもした。これはママも気味悪かったって。

 なのにCookieは決して怒らなかったんだ。「思わせぶり」ってどういうことだろう?いわゆる魔性の女だったんだって。これって父親は困るよね。男子はうれしいけれど。

 ちなみにBettyはさっぱり系。まったくもてない。すごくすごく気楽で、純粋に散歩を楽しめる犬だ。
 
 とにかく、かなわぬ恋に苦しむ男子の大変さを、他の犬の飼い主の何倍も目撃してきたのに、いまさら動揺するパパはおかしいってママが笑う。まあね、男心は繊細だからね。

 実はパパはぼくの停留精巣のことを、病院の先生にどうしても言えなかったんだから。「説明するなんて無理」って逃げて、ドアのそばでそっと見守るだけだった。
 「どうしてこんなことをわたしが説明するの?」って、その気持ちが納得できないママは文句をいっていたけど、やっぱり年の功なのかな。恥ずかしくもなくどんどん相談しているよ。お母さんは強い。「残酷」のまちがいだっていうのはパパの意見。


 何が起こるか知らないから
ぼくは平気。
多少のことは家族がいれば平気。

 車の後ろで2匹で興奮しているうちに、プラスチックの部品が何か取れて転がった。パパ、クレートを使って移動しないとどんどん壊れるよ。ぼくは仕切りのフェンスの隙間から体半分後部シートに出しちゃうし。サイズ的にはありえないんだけど、なぜか出ちゃうんだ。だって、ママのそばがいいんだもの。
 後部座席でぼくたちをなだめるママの肩は泥だらけだ。こういうのは手術しても変わらないんでしょ。